今月は、浜松西営業所のお客様「有限会社 舩越造園」の舩越専務にお話を伺いました。レポートは浜松西営業所フロント、中村です。
徹底してお客様の満足を追及する姿勢に、私がそれまで持っていた「職人さん」のイメージを覆されました。その背景に何があり、どのような事に具体的に取り組んでいらっしゃるか、インタビューしてきました。(*舩越=ふなこし)
「まもなく創業50年の老舗造園業」
Q.お忙しいところありがとうございます。業務内容は社名の通り「造園」ですよね?
--------はい。個人のお客様、企業様、それに公共のお客様を対象に、庭を造る仕事と維持管理の仕事を主にやっています。
Q.この付近では、もう老舗だとお聞きしております。
--------そうですね、私の祖父が創業して来年で50年になります。昭和63年に法人改組し、父である現社長が就任しました。当時まだ私は中学生でした。
Q.その頃から、専務はこの業界に入るおつもりだったんですか?
---------なんとなくそんな気はしていましたし、面白そうだなと思っていました。ただ、現場は職人の世界ですから、なかなか手伝わせてもらえませんでしたよ。子供の自分が砂や泥を使ってジオラマみたいなものを作っては、父からその手ほどきを受けることはありましたけど(笑。
Q.本格的に造園の世界に入ったのはいつ頃ですか?
---------20歳の時ですね。高校は地元の工業高校の土木科を出て、その後、東農大で2年間、環境関連分野を専攻していました。20歳で地元に戻って、こちらの造園業者さんのところで修行を積んで23歳の時に舩越造園に入社しました。修行時代と入社してしばらくは、現場仕事を集中的にこなしていきました。そこで学んだことは大きかったですね。
Q.今は専務として主にどういった仕事をされているのですか?
---------設計や営業、あとはHP関連の業務もやっています。
Q.HP拝見しました!コンテンツがすごく充実しているなぁと思って驚きました。
--------ありがとうございます。HPは、当社の営業に欠かせないツールですし、今の営業スタイルの重要な軸となっていますね。造園という業界も、情報戦略が重要になってきていると思います。職人さんがいい仕事をしていくためには、当然ですがその仕事を獲得する必要があります。自然発生的に生まれるものではありませんから、常にこちらから働きかけるようにしています。作りっぱなしのHPではなく、定期的に分析して対策を施しています。
「造園は芸術であってはならない」
Q.造園業界を取り巻く環境もやはり変化しているのですか?
---------そうですね、厳しい業界事情の中で明らかに変わってきていると思いますよ。建設建築の需要が減少すれば、どうしてもその余波を受ける業界です。その中で、どうやって成長していくのか、各社しのぎを削っています。中にはフランチャイズ展開するところも出てきていますし、今後も業界は変化を続けていくと思います。
Q.その中で舩越造園さんはどのようなところに注力していらっしゃるのでしょうか。
--------造園というものをお客様には身近に感じてもらわないといけないと思うのです。造園は芸術ではなく、古くから日本人の日常の中に溶け込んでいるべきものです。先ほどのHPを軸に、造園をお客様目線で考えて、お客様の求めるものをきちんと引き出して提案できる庭屋でありたいと思っています。
Q.その一環として取り組んでいらっしゃるのが「お客様の声」などのHP上のコンテンツですね。
---------はい、当社ではお引渡しを終えたお客様から当社の技術や職人がどうであったか、をお聞きすることはもちろん、お問い合わせ頂くお客様からも、どのような庭を望んでいらっしゃるかというニーズをたくさんお聞きするようにしています。そういう情報が、私たちの技術の礎になっているのです。ただ単に、できる技術を一方的に提供するという、いわゆる「プロダクトアウト」ではもう通用しません。やはりお客様が満足してこその仕事ですから、何を望んでいらっしゃるかという事を知り、何を提供できるかを常にストックしています。
「職人は、コミュニケーション能力、提案力、プレゼン能力も必要」
Q.私が思い描いていた造園業は、強面の職人さん達が「腕」で仕事していると思っていたのですが、全然違いました・・・。
---------ウチの職人は強面ではないですよ(笑。HP上で、ウチの職人がそれぞれ撮影した写真を公開して「フォトコンテスト」を時折やっています。当社の職人達が社員旅行で写真を撮って、その出来栄えをお客様や取引先の皆様に選考してもらうという企画です。機材は公平に全員インスタントカメラで撮らせるんですが、その作品からも、職人の人となりが良く分かって頂けると思います。皆、いい物を残そうという気質は一緒です。自分の満足するものを作るのではなく、お客様の満足するものを提供したい、という思いが強いですし、そうでなくてはいけないと思っています。そういったことを、フォトコンテストを通じて職人たちが考えてくれていると思います。
Q.そうですね、私が思い描いていた職人さんは「おれが職人、職人の言うことが正しい」みたいな感じでしたけど、舩越造園さんは、お客様に軸足を置いていらっしゃるという点で違いを感じます。
---------昔はね、お客様が「この木、いつ切ったらいいですか?」って聞くと、職人が「おれが暇なとき」と答える、なんていう笑い話がありました(笑。これは少し大げさなたとえ話ですけど、これからの職人は、技術はあって当然、さらにコミュニケーション力、提案力、プレゼン能力も必要になってきます。広く捉えればそれら全てが、「技術」と言えるでしょうし、その成果がカタチとなって現れ、お客様の満足に変わっていくと思うのです。
Q.コミュニケーション能力やプレゼン能力が必要とは驚きました。どうしてそういう事をお考えになったのですか?
---------カタチにしていく仕事とはいえ、完成したときにお客様が喜んで下さるかどうか、という「物差し」はないんですよね。良いか悪いか、満足か不満か、それは作る側が感じるものではないし、客観的に評価できるものでもない。結局お客様の主観でしか判断できないものです。だからこそ、徹底してお客様の求めるものを先に把握する、あるいは鮮明にしていくという、施工前の工程が非常に重要になるわけです。場合によっては、施工が始まった現場で、お客様のこぼした何気ない一言を拾い上げて提案することもあります。それらをきちんと拾い上げて、言葉や形にして提案する能力も、舩越造園の現場には求められます。お客様のひらめきを逃さずに形にしていくスピードが大事なんです。
Q.「庭造りの失敗事例集」というのも、お客様を第一に考えた取り組みですか?
--------はい、成功事例集を提供するところは多いでしょう?でもお客さんからしたら、そこからイメージは膨らんだとしても、そんな自慢ばかり見たくないと思うんです。それよりも「こういう考えでこうしたら失敗した」「失敗の理由はこれだった」といった事のほうがよほど有益だと思います。お客様には、失敗してもらいたくないですし、一方的に職人からそれを伝えるよりも、他のお客様からのメッセージのほうがリアリティもあると思います。何より、そういう失敗事例集が世の中にない(笑。本当にお客様が知りたいのはそっちだと思うんですけどね。
Q.なるほど。お客様相手の商売をしている我々にとっても、非常に参考になるお話ばかりです。最後に、今後の目標を教えてもらえませんか?
--------そうですね、私達の仕事は単純に木や石を使って庭を造る、ということではなくて、お客様に「癒し」という感情や「心」を提供することだと思っています。第三次産業がサービス業、第四次産業が情報産業だとしたら、我々の仕事を「第五次産業:心のサービス業」と捉えて、庭造りをしていきたいですね。その技術がここにはある、と胸を張って言えるように。
<取材後記>
造園業の中でも、公共の仕事と維持管理業務については、街路樹の剪定や河川の草刈などを目にすることがあり、今まで何となく仕事の様子や内容は知っていました。しかし、今回庭造りに関する話を聞いて、何もないところに相手(お客さん)がイメージする庭というものを作り上げてゆく作業の奥の深さと、顧客満足を第一にいろいろな角度から情報収集をする船越専務の熱意に感銘を受けました。
お客さんの思い描く庭に、少しでも近いものを造ってあげられるように、お客さんの声や、世間の流れに常に目と耳を傾けて努力されている様子は、私が思っていた職人さんのイメージとは大きく違いました。また庭造りを通じてお客さんの心の安らぎみたいなものも祈る船越専務の姿勢に感動しました。
今回の現場レポートを終えて、これだけ熱意とプライドをお持ちのお客様を相手に、私自身ももっとお客様のためにできることがあるのでは・・・と考えさせられました。
中村菜穂子